「寒山拾得」(森鷗外)

どこが面白いのか最初分かりませんでした

「寒山拾得」(森鷗外)
(「日本文学100年の名作第1巻」)
 新潮文庫

「日本文学100年の名作第1巻」新潮文庫

「寒山拾得」(森鷗外)
(「阿部一族・舞姫」)新潮文庫

「阿部一族・舞姫」新潮文庫

寒山拾得」(森鷗外)
(「森鷗外全集5」)ちくま文庫

「森鷗外全集5」ちくま文庫

官吏である閭は、
任地へ旅立つ直前、
頭痛に襲われる。
どこからともなく現れた
豊干(ぶかん)と名乗る
乞食坊主が彼の頭痛を治す。
豊干に尊敬の念を抱いた閭は、
豊干に出身地台州の偉人を問う。
豊干は「寒山と拾得」と
答えたが…。

豊干の返答を原文から抜き出すと、
「国清寺に拾得と申すものがおります。
 実は普賢でございます。
 それから寺の西の方に、
 寒巌と云う石窟があって、
 そこに寒山と申すものがおります。
 実は文殊でございます。」

さて後日、閭が従者を連れて
国清寺に拾得と寒山を訪ねると…。
2人は偉人などではなく
ただの下僧であり、
最後は2人に笑われ、
豊干は立ちすくむ、という結末です。

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森鷗外の本作品、正直なところ、
どこが面白いのか
最初分かりませんでした。
鍵は中間部の
「道とか宗教とか
 云うものに対する態度」

にありました。
それには三通りあるというのです。
以下、原文から抜粋しました。

①道に無頓着な人
ただ営々役々と年月を送っている人は、
道と云うものを顧みない。
これは全く無頓着な人。

②道を求める人
著意して道を求める人。
専念に道を求めて、
万事を抛つこともあれば、
日々の務は怠らずに、
断えず道に志していることもある。
これは皆道を求める人。

③中間人物
無頓着な人と、
道を求める人との中間に、
自分をば道に疎遠な人だと
諦念(あきら)め、
道に親密な人を尊敬する人がある。
自分のわからぬものを
尊敬することになる。

つまり、閭は③の人だったわけです。
豊干はそれを見抜き、
閭を担いだのです。
それにしても、
閭は「衣服を改め輿に乗って、」
「従者が数十人」で訪問し、
「朝儀大夫、使持節、台州の主簿、
上柱国、賜緋魚袋、閭丘胤と
申すものでございます」と
馬鹿丁寧な挨拶をしたばかりに
笑いものになってしまうのです。
少々気の毒です。
まあ、よく知りもせずに
他人の評判を鵜呑みにして
盲目の尊敬するのはばかげている、
ということなのでしょう。

さて、私はこれまで本作品に
注目してこなかったのですが、
「日本文学100年の名作第1巻」に
収録されていると、
「これが鷗外の代表作か!」などと
勝手に思い込み、
一生懸命理解しようとしてしまいます。
私も③の人です。

〔「日本文学100年の名作第1巻」〕
1915|父親 荒畑寒村
1916|寒山拾得 森鷗外
1918|指紋 佐藤春夫
1918|小さな王国 谷崎潤一郎
1919|ある職工の手記 宮地嘉六
1921|妙な話 芥川龍之介
1921| 内田百閒
1921|象やの粂さん 長谷川如是閑
1922|夢見る部屋 宇野浩二
1923|黄漠奇聞 稲垣足穂
1923|二銭銅貨 江戸川乱歩

〔「阿部一族・舞姫」新潮文庫〕
舞姫
うたかたの記

かのように
阿部一族
堺事件
余興
じいさんばあさん
寒山拾得

〔「森鷗外全集5」ちくま文庫〕
大塩平八郎
堺事件
安井夫人
山椒大夫
魚玄機
じいさんばあさん
最後の一句
高瀬舟
寒山拾得
玉篋両浦嶼
日蓮聖人辻説法
仮面

(2020.2.23)

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【青空文庫】
「寒山拾得」(森鷗外)

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